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アイヌ文化の法律

アイヌ民族に関する政策として、1997年に「北海道旧土人保護法」が改正され、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(以下、アイヌ文化振興法)が成立しました。

アイヌ文化振興法は、アイヌ文化の振興等を推進することにより、アイヌ民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて日本の多様な文化の発展に寄与することを目的としています。

アイヌ文化振興法では、国土交通大臣及び文部科学大臣がアイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針を定め、その基本指針に即して関係都道府県は基本計画を策定することになっています。

ただし、同法は、あくまでアイヌ文化のみを保護の対象にしており、アイヌ民族の先住民としての権利を保障するものではありません。わずかに付帯決議でアイヌ民族の「先住性」を歴史的事実として認めているのみです。
アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律

(目的)
第一条 この法律は、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれらから発展した文化的所産をいう。

(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国は、アイヌ文化を継承する者の育成、アイヌの伝統等に関する広報活動の充実、アイヌ文化の振興等に資する調査研究の推進その他アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するよう努めるとともに、地方公共団体が実施するアイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2  地方公共団体は、当該区域の社会的条件に応じ、アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に努めなければならない。

(施策における配慮)
第四条 国及び地方公共団体は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよう配慮するものとする。

(基本方針)
第五条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次の事項について定めるものとする。
一  アイヌ文化の振興等に関する基本的な事項
二  アイヌ文化の振興を図るための施策に関する事項
三  アイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する事項
四  アイヌ文化の振興等に資する調査研究に関する事項
五  アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3  国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、次条第一項に規定する関係都道府県の意見を聴かなければならない。
4  国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、次条第一項に規定する関係都道府県に送付しなければならない。

(基本計画)
第六条  その区域内の社会的条件に照らしてアイヌ文化の振興等を図るための施策を総合的に実施することが相当であると認められる政令で定める都道府県(以下「関係都道府県」という。)は、基本方針に即して、関係都道府県におけるアイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めるものとする。
2  基本計画においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一  アイヌ文化の振興等に関する基本的な方針
二  アイヌ文化の振興を図るための施策の実施内容に関する事項
三  アイヌの伝統等に関する住民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策の実施内容に関する事項
四  その他アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3  関係都道府県は、基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを国土交通大臣及び文部科学大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
4  国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本計画の作成及び円滑な実施の促進のため、関係都道府県に対し必要な助言、勧告及び情報の提供を行うよう努めなければならない。

(指定等)
第七条  国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的として設立された民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三十四条 の規定による法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条 に規定する業務を行う者として指定することができる。
2  国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
3  指定法人は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣及び文部科学大臣に届け出なければならない。
4  国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。

(業務)
第八条  指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一  アイヌ文化を継承する者の育成その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと。
二  アイヌの伝統等に関する広報活動その他の普及啓発を行うこと。
三  アイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うこと。
四  アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する普及啓発又はアイヌ文化の振興等に資する調査研究を行う者に対して、助言、助成その他の援助を行うこと。
五  前各号に掲げるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと。

(事業計画等)
第九条  指定法人は、毎事業年度、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  前項の事業計画書は、基本方針の内容に即して定めなければならない。
3  指定法人は、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならない。

(報告の徴収及び立入検査)
第十条  国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定法人の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2  前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(改善命令)
第十一条  国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人の第八条に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、指定法人に対し、その改善に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(指定の取消し等)
第十二条  国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
2  国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。

(罰則)
第十三条  第十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
2  法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して同項の刑を科する。